果物と二人三脚で歩くうちにジャムは生まれてきました。
果物屋を始めたのは20数年前のことです。
私は美味しいフルーツに出会いたくて果物屋になりましたが、どうしても売れ残ってしまう高級果実を捨てることがもったいなくて出来ませんでした。
「ジャムしてみたらどうかしら?」
こうして軽い思い付きから生まれたメローネのジャムですが、作り出すとすっかりジャムに魅せられました。
素材の果物に砂糖を加え、火にかけるとまもなく美しい色が出てきます。深い深い赤。鮮やかな黄。眼のさめるような緑。鍋をかきまぜながら、この色が変化していくのを見るのは無上の楽しさです。
ここでこの色を止めておきたい!と思っても、まだとろみがついていなかったり、糖度が上っていなかったり、美味しくて綺麗なジャムにたどり着くまでは試行錯誤の日々でした。
お客様に食べて、満足していただける、細にして底味のある味わいのレベルまで上げるのに長い長い時間が必要でした。
果物ごとに違うのはもちろん、果物の時期ごとにていねいな下ごしらえと、ひと鍋ごとに異なるキメ細かな製造法。
「美味しい」と言って下さるお客様の声に励まされ、まだまだ、もっともっと、美味しいジャムを作り出したい。そう願いながら、さらなるジャムの美味しさに向かってそれは今もまだ続く遠い道のりです。
食べることが好きですね。
好き以上で、以前はワインなんかもボルドーの1級シャトーやブルゴーニュの特級畑を普段飲みにするようなひとで、あきれていました。魚でもどこで覚えてくるのか、お料理屋さんより詳しいくらいです。
もともと器用なほうで、厨房の増改築も電気、ガス工事以外全部自分でしてしまいましたし、2階の事務所なんか、コンクリートだけの2DK一戸を間仕切りから内装まで全部仕上げてしまいました。
なりたかったのが大工か建築家か料理人だったそうで、今になって自分のしたかったことを全部しているのではないかしら。
今は日々ジャム作りに没頭しています。
わがシェフです。(マダム談)