ジャムというのは果物に砂糖を加えて加熱することで、保存性だけでなく、もとの果実とは別のおいしさを作り出した人間の知恵です。
素材の風味をなるべく残すのはもちろんですが、そのために極端に低糖度にしたり、低温加熱処理をするのは実はジャム作りには本末転倒です。
美味しいジャムのためにはやはり砂糖と炎の適度な力を借りなければなりません。
なまの味に近づけるのであれば減圧で調理する方法もありますし、
蒸気で炊く方法もあります。
しかし、なにか物足りなくなります。
その何かとは何なのでしょう?
それはジャムの甘みの奥行きです。
製菓用語でいう【カラメリゼ】が出ないのです。
これはジャムの美味しさの風味の大きな要素です。
カラメリゼとはジャムを煮る時に砂糖の糖分が鍋の底でほんの少しだけ焦げることを言います。
もちろんカラメル臭を感じるようでは行きすぎですが、ほんのわずかの焦げは必要なのです。
それがジャムの甘みの奥行きを作ります。
そのためには直火加熱しかありません。
要するに普通に鍋を直接コンロの上に置いて直火でジャムを炊くわけですが、この普通が小規模ながらも商品として作るのはかえって難しいのです。
素材や気温や湿度などによりカラメリゼが出来る条件は毎日、毎回違います。
だからいつもジャムの鍋に付きっきりでジャムを見張っていなければなりません。
経験と目でカラメリゼが出来る瞬間を見極めなければならないからです。
これが先ほど言った直火では小規模でも商品としてジャムを作るのが難しいというところです。
ところが、大規模な工場などの蒸気ジャケット釜などでは人がついていなくても全自動で、きれいに焦げずにジャムは仕上がってしまいます。
蒸気で蒸すような工程ですから焦げが出来ないのです。
つまりカラメリゼは生まれません。
工場生産ではどうしても甘みの奥行きのないジャムが出来てしまうのです。
メローネが手作りの直火にこだわる理由が解っていただけたでしょうか?
お客様に甘みやうまみに奥行きのある、本当に美味しいジャムをお届けしたいという思いが手間暇のかかる鍋での直火での生産という方法をまもり続ける理由なのです。